十字架にかかる時を前に、イエス様は弟子たちの足を洗い、ふき始められました。これは十字架のみわざの意味を正しく理解させるための行動でした。この箇所を理解するために、罪とは何かをまず見ていきましょう。
『・・・罪とは律法に逆らうことなのです。』（新約聖書 ヨハネ第一の手紙 3:4）
律法とは神の定めた命令で、神の命令とはイエス・キリストを信じ、互いに愛し合うことです。互いに愛し合うというのは「目に見える兄弟を愛することは、神を愛すること」と聖書は教えていることから、神を愛することです。ですから罪に定められる基準は次の２つです。
①イエス・キリストを信じるかどうか
イエス・キリストを信じない罪（罪A）に対する罰は、天の御国に入ることができず、ゲヘナへ行くということです。アダムとエバ以来、人はみな生まれながらに神を知らず、信じない罪を持っています。神と断絶し、霊的に死んだ状態です。そして、必ず死を迎えるという罰が与えられています。しかし、神は「救いの恵み」を用意してくださいました。イエス・キリストを救い主として信じる者には、永遠のいのちを与え、体が滅びても、たましいは永遠に天で神と共に生きるという恵み、また、この地上においても神とともに生きる恵みが与えられました。私たちは、神のいのちにつながれたのです。
②神を愛するかどうか
神を愛さず、人を愛さない罪（罪B）に対する罰はつらさです。聖書の教えがこのことに集約されることから、イエス・キリストを信じない罪以外は、すべてこの罪にあてはまります。この罪に定められるのはクリスチャンだけです。罪Aを赦され、永遠のいのちを与えられた人にとって、問題となるのです。クリスチャンでない人は、罪Aによってさばかれている状態なので、罪Bの問題の土俵に上がっていないのです。神を愛せない罪、人を愛せない罪により、心につらさを覚えますが、これに対し、神は「赦しの恵み」を用意しておられます。
イエス様がこの世に来られ、十字架にかかることで恵みを用意されたのは、人を苦しみから解放するためです。イエス・キリストを信じることで、救いの恵みを受けた者は、もはや罪Aに問われることはありません。これからは罪Bと戦っていくのです。
罪Bは、言い換えれば、神のことばを信頼せず、見えるもの、人の言葉を頼ることです。人は本来、神の愛によってしか満足できませんから、見えるものによって心を満たそうとすれば、当然、満足できず、つらくなります。人の苦しみの原因はここにあります。神はこの苦しみから私たちを解放したいと願っておられ、イエス様は弟子たちの足を洗うことを通して、罪Bからの解放の道筋を示されたのです。
『「もしわたしが洗わなければ、あなたはわたしと何の関係もありません。」』（新約聖書 ヨハネの福音書 13:8）
イエス様に足を洗っていただくことに恐縮して『お洗いにならないでください』というペテロに、イエス様はこう答えられました。見えるものにすがる罪Bを神に差し出さない限り、神との信頼関係は築けないという意味です。それを聞いて『手も頭も洗ってください』というペテロに、主はこう言われました。
『「水浴した者は、足以外は洗う必要がありません。全身きよいのです。…」』（新約聖書 ヨハネの福音書 13:10）
水浴した者とは、イエス・キリストを信じ洗礼を受けた者を意味します。ですから、罪Aを赦された者は、何度もその罪を差し出す必要がありません。これからは、足の汚れである罪Bを神に差し出せばよいのです。罪Bによって救いが取り消されることを心配する方がいますが、その心配はいりません。ただ罪Bによって足が汚れるので、イエス様に洗っていただくことで、赦しの恵みを受け、神への愛（信頼）を増し加えて行く、すなわち神との信頼関係を築いていくことを目指すよう、示されているのです。
ただし足が汚れていることに気づかなければ、イエス様に洗っていただくために差し出すことができません。私たちが主に信頼いない罪に気づくためにイエス様はこう言われました。
『「・・・あなたがたもまた互いに足を洗い合うべきです。」』（新約聖書 ヨハネの福音書 13:14）
互いに愛し合いなさいという神の命令に従ってやってみなさいと主は言われます。そうすれば、すぐに自分の罪が分かるからです。人をねたんだり、さばく自分、仕えられない自分、自分のことしか考えられない自分にぶつかるのです。その時、気づいた罪をそのままイエス様に差し出し、洗っていただき、赦しの恵みを受け、助けていただけばよいのです。それが、人に頼らず神に頼ることであり、神は私たちが愛することができるよう助けてくださいます。罪を差し出し、洗っていただくこと、それが私たちの問題の真の解決です。
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